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営業利益を増やすための要素分解とその優先順位の付け方

会社を継続していく上で重要なことは利益を獲得し続けることです。

利益は会社を存続させるための源泉です。売上が増えたからといって利益に結びつかなければ全く無意味だということは、ここではっきりと申し上げておきます。

利益は以下のサイクルをきちんと回すことによって実現されます。

  • 1.利益を把握する単位を事業や部門にブレークダウンする
  • 2.ブレークダウンした単位の利益をタイムリーに把握する
  • 3.その利益が良い状態なのか悪い状態なのかの評価軸を作る
  • 4.利益管理している各事業や部門ごとのテコ入れを図る
  • 5.事業や部門の選択と集中を図る
  • 6.空いたリソースにより新しいことを始める

これらを行っていけば、ほぼ100%利益を増やせます。もっと増やせるはずの利益が現状のままなのはこれらのサイクルづくりを経営者がサボっているからです。

理屈では分かっているんだけど(当たり前のことなので)、重い腰が上がらない・・・という経営者の心情も分からんでもありません。こんな管理を継続させるのは正直面倒くさいですからね。

でも、もっと増やせるはずの利益があるのにサボっているのだとしたら、もったいない状況であることは確かです。

KMSでは秒速決算の導入支援やコンサルティングサービスを通じて、上記のサイクルづくりをご支援しています。この実現で獲得できる利益は、我々にお支払いいただくフィーに比べて格段に高いものとなるケースが通常です。

上記サイクル作りには興味あるものの自社のみでの対応はしんどい、という場合は是非お気軽にKMSへお声がけください。きっとお役に立つご話ができると思います。

さて、今日はそんなサイクルづくりの4の話をしてみたいと思います。

1から5までについては、それぞれ別の記事で解説しますが、この4の話が一番難しく、きちんと考えた対応をすべき重要な内容だと感じています。

また、これは経営者のみでなく、現場の社員も含めた皆さまで検討・実行すべき内容ですので、是非皆さまで理解をしておいていただければと思います。

1.利益を増やすための選択肢の種類

利益は、売上から費用を差し引いた差額です。
そのため単純な話、利益を増やすには、「売上を増やす」か「費用を減らすか」の議論に終始されがちです。

しかし、利益が売上と費用の差額である以上

「売上を減らして費用をそれ以上に減らす」
「費用を増やして売上をそれ以上に増やす」

という選択もあるわけで(後者は通常よく行われる施策ですね)、この場合、利益を増やすために「売上を減らす」や「費用を増やす」ということも考えられるわけです。

要は、売上と費用のバランスを図ることができれば、利益を増やすための打ち手はたくさん考えられる、ということです。

具体的に何すれば?という点についてまで突っ込んで考えると、業界の特徴、地域の特徴、その時の政情などによっても変わるでしょうし、考えられることは無数あるはずだ、ということをまずは念頭に置いてみてください。

ただ、話を単純化する上で、この記事では利益を構成する売上や費用を少しだけ分解し、その分解した内容を用いて、利益を増加させる基本構造についてのお話をするにとどめることにさせていただきます。

各業界などの具体的な検討はまた別記事にて行ってまいります。

2.利益を構成するのは4つの要素やすための選択肢の種類

「利益=売上-費用」 です。

費用の中には売上数量に比例的に増える「変動費」と売上数量に比例的に増えない「固定費」に分かれますので、

「利益=売上―変動費―固定費」 と組み替えてみましょう。

さらに、「売上高 = 販売単価 × 販売数量」、「変動費 = 変動費単価 × 販売数量」であることを踏まえると、

「利益=販売単価×販売数量-変動費単価×販売数量-固定費=(販売単価-変動費単価)×販売数量-固定費」と組み替えることができます。

文字が多いので、ちょっと英訳の頭文字をとって簡便的に以下のように表現させていただきます。

G = P×Q-V×Q-F = (P-V)×Q-F
(G:利益、P:販売単価、Q:販売数量、V:変動費単価、F:固定費)

利益Gは、販売単価P、変動費単価V、販売数量Q、固定費Fの4つの要素によって決まることがわかります。そして、この式から、Gを増加させるには、他の要素が固定だとすれば、Pを上げる、Vを下げる、Qを上げる、Fを下げるという4つの切り口があることが分かります。

3.4つの要素を用いた利益感度分析

ところで、現実はそんなに単純ではありません。
Pを上げる、Vを下げる、Qを上げる、Fを下げることがすなわちGの増加になるかというと、そうとは限らないのです。他の変数が一定であれば確かにGの増加につながるのですが、現実の世界では

  • ・販売数量(Q)を増やすためには経費(F)を追加で掛ける必要がある
  • ・販売単価(P)を上げると販売数量(Q)が減る
  • ・原価(V)をケチると品質が落ちて販売数量(Q)が減る

といったことが見受けられるかと思います。
Gが最終的に増加するかは、P、V、Q、Fを意図的に変化させた結果、他の変数も意図せずに同時に変化してしまう結果を受けて決まります。意図的に変化させるプラス要因と、意図せずに変化してしまうマイナス要因の関係については、実際に行動してみないと分かりませんが、事前にシミュレーションを行うことで予測を立てることができます。事前のシミュレーションを行う上では、利益感度分析が有効です。

利益感度分析について

ここでいう利益感度分析は、Gを〇〇円増やすために、P、V、Q、Fを何パーセント変化させたらよいかの分析を意味します。
まずは、どの変数を動かすとどれくらい利益に貢献するかを見るため、各変数それぞれで感度分析をします。次いで現実的な事情を踏まえ、複数の変数を同時に考慮した感度分析も行います。実際の数値を用いて見てみましょう。

  • ・P=1,000 V=500 Q=400 F=150,000 が現状のとき
  • ・G=1,000×400ー500×400ー150,000=50,000

と計算されます。

各変数それぞれで利益感度を見る

ここで、各指標を単独で動かしてGを60,000(20%アップ)にしたい場合は

  • ① P:1,000 → 1,025(2.5%アップ)
    → G=1,025×400‐500×400‐150,000=60,000
  • ② V:500 → 475(5%ダウン)
    → G=1,000×400‐475×400‐150,000=60,000
  • ③ Q:400 → 420(5%アップ)
    → G=1,000×420‐500×420‐150,000=60,000
  • ④ F:150,000 → 140,000(6.7%ダウン)
    → G=1,000×400‐500×400‐140,000=60,000
    (G:利益、P:販売単価、Q:販売数量、V:1個当たり変動費、F:固定費)

の時に、それぞれ達成できることが分かります。
利益を20%増やすために、各変数を20%増減させる必要はありません。各変数の単独の感度で見ると、増加率などの単純な比率ベースで一番効果があるのはPで、一番効果がないのがFです。今回のケースではVとQの感度は同じですが、変動費率(変動費÷売上)によって、Vの方が効果が高かったりQの方が効果が高かったりします。

一般論として、Pはほんの少し動かすだけで利益に大きな影響を与え、一方、よく言われる「経費削減」つまりFの削減はそれほど利益に影響を与えないと考えられています。

複数の変数を動かして利益感度を見る

PをアップしたらおそらくQが落ちると予測できます。しかし、10%程度なら値上げ
の検討もできそうです。そのとき、目標利益60,000円を達成させるためにはQをどれくらい減らしても大丈夫でしょうか。

  • ・G=(P-V)×Q-F であることから、
  • ・Q=(G+F)÷(P-V) となり、
    これを先ほどの例に当てはめると
  • ・Q=(60,000+150,000)÷(1,100‐500)=350

Pを10%アップ(1,000 ➡ 1,100)させることで、Qが400から350にダウン(12.5%ダウン)しても、目標利益の60,000(現状から20%アップ)を達成できることが分かります。

他のシミュレーションとして、Fを上げてQを増やすという戦略があるかもしれません。Fを10%増やす結果(150,000➡165,000)、Qがどれくらい増えれば目標利益を達成できるでしょうか。

  • ・Q=(G+F)÷(P‐V) ですから、
  • ・Q=(60,000+165,000)÷(1,000-500)=450

Fを10%増やす結果、Qを400から450にアップ(12.5%アップ)させないと、目標利益(現状から20%アップ)を達成できないことが分かります。
ところでこれらのように、施策は色々考えらえますが、どれが各活動単位にとってフィットするかはそれぞれの担当者でないと肌感が分からないかと思います。先ほどの2例のうちのどちらかに、担当者がピンと来るかもしれません。
シミュレーションは何パターン行ってもタダです。実際に利益が達成できそうだというイメージができるまで、何度も行ってみましょう。

「売上を増やすために広告費を掛けよう」は何の戦略?

多くの会社において、利益を増やすために何をしようとするかというと、まずは売上を上げようと考えます。そのために広告費を掛けよう、販売促進をしよう、人を増やそう、という発想になります。利益を増やす戦略パターンのほとんどが、このような内容ではないかと思います。

因みに、これらの内容は、QとFの話で完結できます(Fを増やしてQを増やす)。
利益を増やす切り口は4つ(P、V、Q、F)あるのに、ほとんどの戦略がQとFの2軸で決められているケースが多いです(一般的に言われる経費削減もFの話)。

売上はPとQの掛け算であり、Pを増やすのも売上の増加につながるのですが、多くの場合でPは所与として捉えられ、売上を増やすことはQを増やすことだと考えられがちです。

また、Vを減らすのも利益の増加に大きな効果をもたらすのに、こちらも比較的QとFの話に比べてフォーカスされていない気がします。Fを増やして(研究開発投資や、専門人員の採用など)、Vを減らすと利益の増加に貢献するかもしれません。

もし、利益を増やす戦略をQとFのみで考えていた場合、これからは、4つの切り口を混ぜながら、多面的な戦略を検討してみて下さい。

是非値上げ戦略を検討してみて下さい

4つの切り口の中で一番踏み切りにくいのがおそらく値上げ戦略でしょう。特に、一般消費者向け(BtoC)のビジネスをしている場合は、消費者が価格に敏感に反応し、戻って来なくなるリスクがあります。しかし私は、これほど良策はないと思っています。

先ほど見たように、4つの切り口の中で、値上げ戦略による利益感度は最上位です。値上げにより販売量が減ってしまうとしても、利益が増える可能性は十分にあります。そして、販売量の減少は社員の負担減に繋がりますから、労なく利益増になるわけです。
社員が楽になる分、会社の雰囲気が良くなるかもしれませんし、新しいことができるようになるかもしれません。もし販売量が変わらないのであれば、利益が増えますのでそれはそれで儲けものです。

因みに、いったん決めた値段を上げることは元より、そもそも値段が高くても「これは良い」とお客様から思ってもらえる商品・サービスを作ることは、容易ではありません。しかし、それこそが事業成功の肝であり、一言で言うとライバルとの差別化が必須です。

  • ・商品・サービスが新しい
  • ・商品・サービズを使うと得られるものがある
  • ・商品制作までのストーリーが共感できる
  • ・PRの手法が斬新で目を引く
  • ・お客様との人間関係が良好である

その他、差別化を図る方法は色々あると思います。いずれの場合であっても、差別化の源泉は皆様のチームに溜まっている「知識」と「経験」に他なりません。勝算があるなら、顧客のターゲット層を変えてしまっても全く問題ないです(特に企業向けビジネスの場合)。是非知恵を絞って値上げ戦略を考案し、メンバー皆さんで「楽」をして下さい。

基本的に値下げ戦略は愚策

儲かるビジネスが何なのかを答えるのは難しいですが、儲からないビジネスを答えるのは簡単です。それは

  • ・恒常的な値下げに追い込まれるビジネス

です。価格交渉力のない下請けビジネスや、競争激化により値下げ合戦になっているビジネスが全然儲からないのは周知の通りです。
先ほど、値上げ戦略が利益感度が一番高い良策である、と記載したばかりですが、今度はその真逆であり、値下げ戦略はマイナスの利益感度が一番高い危険策なのです。

値下げがキャンペーンなどの一時的なものであればよいのですが、恒常的なものとなると厳しいです。先ほどの例で見ると、
P=1,000、V=500、Q=400、F=150,000が現状のとき、G=50,000となりますが、Pを10%削って、Qを増やすことにより同じ利益を確保しようとする場合

  • ・Q=(G+F)÷(P‐V) ですから、
  • ・Q=(50,000+150,000)÷(900‐500)=500
    と算定されます。
    (G:利益、P:販売単価、Q:販売数量、V:1個当たり変動費、F:固定費)

このケースでは、Pを10%ダウン(1,000 ➡ 900)させるると、Qを400から500にアップ(25%アップ)させないと、同じ利益を確保できません。

中には、Pを10%下げてQを10%増やせば売上は変わらないので利益も変わらないはず、という発想の方がいるのですが、変動費の存在により全くそういうわけではないので、くれぐれもご注意ください。

なお、Pを下げた結果Qが増え、そのままの状態だったらまだよいのですが、通常は追い打ちを掛けるように競合他社もPを下げて、結局Qがまた下がってしまうケースが少なくありません。
Qが減ったからといって、慌ててPを下げてしまった場合、一瞬Qは増えて売上は回復するものの、時間の経過とともにQがまた減っていき、結果、売上は最初の下落時よりさらに下がるのです。この循環にはまると、利益はどんどん減ってしまいます。
できればQが下がったからといって慌ててPを下げず、Vを上げたりFを上げてQを回復るよう努力してみましょう(Pについては、むしろ上げる施策が採れないかの検討を日頃から心がけたいものです)。

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